電池は正極、負極と電解質からできています。リチウムイオン二次電池の場合、正極の材料はリチウム系金属とその他の金属を合成したものです。このリチウム系合金としてコバルトが使われていますが、コバルトは希少金属であり、リチウムイオン二次電池の生産コストの約7割を占めるとされています。コストダウンを目指してニッケルやマンガン、リン酸鉄などを使ったものも開発されていますが、ニッケルもやはり希少金属です。
近年、低コスト化を目指してコバルトやニッケルを含まない正極材料の開発がすすめられています。鉄やチタンを使用したもので、低コストを実現しつつこれまでの正極と同等の高性能を維持できるものとして注目されています。
リチウムイオン二次電池は、正極材料の充電、放電時のリチウムイオン出し入れの量や電圧が電池の容量や電圧を決定づけるため、正極材料の性能が特に重要です。鉄やチタンは正極材料としては活用が難しいとされていましたが、最も安く手に入りかつ豊富に存在する資源であり、正極材料としての活用が期待されています。
一方負極材料もより高性能なものへと開発が進んでいます。高性能な正極が開発されるのに伴って、高くなる正極の容量を活かすため負極の容量も大きくする必要が出てくるのです。現在リチウムイオン二次電池の負極材料には一般的に黒鉛系炭素材料が使われています。
しかし、自動車などへの搭載を考えてさらなる安全性と長寿命が求められる中、現在の材料ではエネルギー密度が低く、寿命も充分ではないという問題があります。この問題を改善するために酸化物系材料を使用した負極材料が開発されています。
こういったことから酸化物系の材料としてはチタン酸リチウムが使われていましたが、現在開発されている新しい高容量チタン酸化物は、高い容量を実現し、さらにリチウムを含まないことで低コストも実現できるとされています。リチウムイオン二次電池は自動車産業や機械産業などの大型産業での活用が本格化しており、それに対応した開発が期待されています。